理事長挨拶
水野雅文
日本森田療法学会 理事長 水野雅文
(東京都立松沢病院 院長)
このたび中村敬先生の後任として日本森田療法学会の理事長に就任いたしました。
私と森田療法の出会いは医師になって10年目が過ぎた頃、森田療法セミナーに通い始めたときから始まります。当時は統合失調症のリハビリテーションの研究をしており、特に意欲障害の改善に役立ちそうな治療を探しておりました。セミナーを通じて、ケーススーパービジョンも受けさせていただき、慶應義塾大学病院の精神科病棟で森田療法的治療を実施していました。恩師や仲間に恵まれ、小さい試みながら、この実践を論文化することもできました。以来私の外来は、不安障害をはじめ神経症圏の治療の基盤は森田療法、あるいは外来森田療法というべきスタイルが中心となっております。
 森田療法は日本の文化や価値観を背景に誕生した透徹した精神療法であり、混沌と価値基準か交錯する現代でもなお、その輝きを増しています。一方、エビデンスの集積が全盛である昨今、森田療法の立ち位置も日々問われ続けております。認知行動療法の圧倒的な広がりの中での森田療法のさらなる普及や、治療から予防という精神医学全体の潮流にどのように関わっていくかなど、森田療法が取り組むべき課題もあろうかと思います。温故知新の姿勢で、森田療法の伝統を重視しながらも森田療法の発展に寄与できるよう努めて参りたいと思います。
 会員の皆さまのご指導こ鞭撻を心よりお願い申し上げます。
2021年4月吉日
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